深夜枠にとんでもないドラマが忍び込んできた。「鬼女の棲む家」第1話。石田ひかりさんが「完璧な主婦」と「ネット上の鬼女」を一人で演じ分ける。このキャスティングの妙に、まず唸った。
「鬼女」とは何か──知らない人のための前提
ネットスラングとしての「鬼女」は、既婚女性が集まる掲示板(旧・2ちゃんねる既婚女性板)のユーザーを指す言葉だ。特定班とも呼ばれ、炎上した人物の個人情報を驚異的なスピードで特定することで知られる。
このドラマは、その「鬼女」を現代のSNS時代にアップデートしている。掲示板ではなく、個人のスマートフォン一台で炎上工作を行う主人公。時代の変化を正確に反映した設定だと感じた。

石田ひかりの「表の顔」が完璧すぎるから怖い
第1話の前半30分間、石田ひかりさんは「理想的な主婦」を演じる。料理、掃除、近所付き合い、子どもの世話。すべてが丁寧で、穏やかで、非の打ちどころがない。
だからこそ、夜にスマートフォンを手に取った瞬間の「切り替わり」が恐ろしい。表情が変わるわけではない。むしろ変わらないことが怖い。昼間と同じ穏やかな表情のまま、ターゲットの個人情報を掘り、炎上させる導線を設計する。「悪意を持った善人」という矛盾を、この人は体現できてしまう。

「ヒイラギ」からの依頼──物語を動かす装置
第1話の終盤、主人公のもとに「ヒイラギ」と名乗る人物から炎上依頼が届く。この展開で、ドラマは「一人の女性の二面性」から「組織的な闇」へとスケールを広げていく。
ヒイラギという名前の選び方が秀逸だ。柊は魔除けの植物として知られるが、鋭い棘を持つ。「守るためのもの」が「攻撃の道具」になるという二重性が、主人公のキャラクターそのものと重なる。
深夜ドラマだからこそ描ける「ネットの本当の怖さ」
このドラマが深夜枠で正解だと思う理由がある。ネット炎上の描写が、ゴールデンタイムでは許されないレベルでリアルなのだ。特定の手法、拡散のメカニズム、炎上後のターゲットの崩壊。「こうやって人は追い詰められるのか」という過程を、カメラは淡々と映す。
視聴後にスマートフォンを見る手が少し震えた。自分も「鬼女」の標的になりうるという恐怖。あるいは、自分の中にも「鬼女」がいるかもしれないという恐怖。このドラマは、その両方を突きつけてくる。

※イラストはAIで生成したイメージ画像です
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